冷コひとつ

学生のころアルバイトしていた喫茶店には
常連のお客さんが多くいました。
店に入るなり「いつもの」
席に着くなり「いつもの」

もちろんお客さんによって「いつもの」は違い、
ある人は温かいコーヒー。
別のある人はカフェオレ(牛乳多め)。
温かい牛乳、という人もいました(そこに砂糖をドボン)。
貧乏学生だった私にとって、
喫茶店でわざわざお金を払って牛乳を飲むというのはとてつもない贅沢でした。
いや違う。今もそうです。
今でも私の辞書に「喫茶店で牛乳」っていうのは載っていません。
だって家でガブガブ飲めるよ?

最初にあの言葉を聞いたときの衝撃は今でも覚えています。

常連じゃないお客さんがきて、こう言うのです。
「レイコ」
は?
「レイコひとつな」
へ?

聞いたこともない謎の言葉。
外国のメニューだろうか。裏メニューだろうか。
とりあえず店の親分にオーダーを伝えます。
はいよ、と出てきたのはアイスコーヒーでした。
レイコが冷コ、つまり「冷」なコーヒーだと知った瞬間でした。

それから長い月日が流れました。
冷たいコーヒーを冷コと呼ぶ人は減ってきました。
あと20年くらいで絶滅するんじゃないかと予想しています。
ごくまれにですが、クールコーヒーと表現する人もいます。
これは本当にレアですから、会えたらラッキーかもしれません。

最高気温が30度に届きそうな日が続いています。
キリッと冷えたアイスコーヒーが美味しい季節になりました。
今年も日本中の喫茶店で「冷コ」が注文されることでしょう。

やまざき社労士は、コーヒーはホット派みたいです。
エアコンの効いた場所でおもむろにいただく熱いコーヒーもオツなもの。
コタツでアイス、みたいなものでしょうか。
私は猫舌なので熱いと味がわかりません。無念です。

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