思い出の月は金色に輝くものです

時代劇というと、どのあたりの時代を思い浮かべますか?
やはり江戸時代ですよね。
もう少し遡って安土桃山・戦国時代もよくある設定。
室町時代というとアニメの一休さんではおなじみですが
実写物だとなかなか見かけないようです。
鎌倉もほぼ無し。
平安になると宮廷物で少し出てくるものの、
奈良・飛鳥となると、またもやごくわずか。
ここまでくると、もう昔すぎて何でもオッケーな気がしてきますが
そこは真面目な日本人のこと。
好き勝手に色鮮やかな歴史絵巻を創作したりはしません。
あくまでも時代考証を経たうえで、となるので
映像化するにあたっての参考情報が少ないことも手伝って
なかなか時代劇にはなりませんね。

数年前にたまたまテレビでやっていたのを見たのですが、
なかなかおもしろい時代劇、というより歴史再現ドラマがありました。
舞台は九州あたりの海岸線。
沿岸警備をする防人たちが主人公です。
時代は8世紀くらいでしょうか。
農民が徴用されているので、まあ素敵な衣装ではありません。
加えて髪型や風体も、どう前向きに考えても素敵ではありません。
さらに言語や言い回しも現代とは違います。
ひとことで言えば、まったくもって地味な、色恋もなく、
なんとなく煤けた印象の映像でした。
でもこれ、めっぽう面白かったです。

当時の人の気持ちや行動のパターンなどは、きっと誰かが研究しているのでしょう。
当時の言葉づかいなどは、万葉集等に集録された和歌から
推察したものと思われます。
衣服や道具などは、遺跡から出てきたものに
想像力をトッピングして制作したと考えられます。
少ない情報でも、想像して、ふくらませて、でも膨張しすぎていないかを確認して
なんとか作り上げたのであろう再現ドラマ。
近年まれにみる面白さでした。
防人を演じる役者たちも、いろいろ不安だったでしょうね。
ほんとにこれでいいんかな、と。

先日、若いころの持ち物を整理していたら
カセットテープがどっさり出てきました。
マイケルジャクソンのBadとか、ビージーズのベスト集とかいろいろ。
うわあ、なつかし!
ベッカムの嫁がアイドルだったころのテープもある!(スパイスガールズです)
杉良太郎もある!なんで!
ちょっとした驚きもありつつ、テープの山をガサガサすること数分。
私は気付いたのです。
…これ、もう再生できない…

そうでした。テープレコーダーがもうないのです。
あんなに世話になったテープレコーダー。
もう歴史の1ページになってました。

今から100年くらい経って、昭和後期が舞台の時代劇が作られるとき、
登場人物たちはテープをうまくデッキにはめることができるでしょうか。
実際に使っていた人たちは絶滅して。
遺跡から出てきたラジカセに想像力をふりかけて。

A面が終わったら自動でB面にいくやつ、欲しかったなあ。

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